――――………




「…これ以上いたら…俺…行けなくなるから…行くよ……」




あたしを抱き締める力強い腕が、少しだけ緩む。




「待ってるよ…蒼だけを見て…待ってるから……!」




「…ん」




泣いちゃ…ダメ…




「…俺が腕ほどいたら…振り返らないで行って」




蒼は、そっとあたしの身体を離した……―――。




見つめ合い、あたしは瞳に溢れる涙を堪えて微笑んだ。




「また…ねっ…」




そう言って、あたしはくるっと後ろを向き、歩き始めた……―――。




振り返らない

離れられなくなるから




歩き続ける足が

少しずつ足早になってく




まだだよ……

もぉ少し………




まだダメだよ……




あたし…

堪えて…もぉ少しだけ……




ドンッ…―――!




「イッ…たぁ…」




すれ違った人にぶつかり、あたしは倒れ込んだ。




もぉ…ダメ……

もぉ…泣いてもいいよね……?




あたしは、ゆっくりと立ち上がる…




ポタッ…ポタッ……


床に、涙の雫が落ちる。




堪えてた涙が

一気に溢れ出す……




「…ぅぅ…っ…蒼…」




蒼が

行っちゃった




行っちゃったよぉ……




「…蒼…っ…!」




涙で景色が

歪んで見える………