崖に落ちてから何時間が経ったのだろう。お腹も空いたし、有坂は泥だらけで相変わらず砂の壁を掻き続けていた。




「今頃…大騒ぎなんだろうな…。ケン…心配してるだろうな…絢音も…」




あたしがポツリと呟くと、有坂が砂の壁にもたれかかるように倒れ込んだ。




「…っハァ…ハァ…」




有坂に駆け寄り、泥だらけの顔を手で拭う。




「ちょっとアンタ…大丈夫?すごい汗…」




「…っ……っ……ハァ…平気」




無理に笑う有坂の顔を見て、あたしもつらくなった。




「このままアンタと死ぬのはイヤだけど、アンタに死なれても困るんだけど」




「…死なないよ…高梨を助けるまでは…」




息切れ…汗…




あたしは有坂の額に触れた。




「アンタすごい熱じゃんっ」




「これぐらい…たいしたことない…」




あたしの手を振り払い、ぐったりと横に倒れ込む。




「ちょ、ちょっと…本当に死なないでよ?」




「…大…丈夫」




有坂の身体を必死に揺すり続けた。




「しっかりしなさいよぉっ」




「…高…梨……本当に…ごめ…んな…」




「死んだら…一生許してやんないんだから…」




許して欲しいなら




ちゃんと生きてて……―――