あんな酷いことしたヤツが…何で…?




何でそんなに必死になってんの…?




そんな汗と血まみれの手で…




もう…やめてよ…




「何で…あんなことしたの…?アンタ…栞の何…?」




「夏川栞は…俺の秘密を知ってた…。俺は金の為にやったんだ…」




有坂は、母と二人暮らしで、小さい頃から家が貧しかった。




貧乏ってだけで小学生の頃は酷いイジメにもあってきた。




イジメに負けない為に、理由も言わず、担任の知り合いに頼みこんで、道場の掃除をする代わりに、タダで空手を習い始めた。




彼は、顔が美形だった為に、女子に人気もあった。




けどそんな人気もすぐに終わる。家が貧乏だと知ると、みんな可哀想な目で自分を見た。




勝手に近づいてきて、勝手に離れていく。女に興味なんてないのに。




女子から近づかれないように、黒のだてメガネをかけた。




彼には、勉強しかなかった。




将来金持ちになる為には…国立の大学に入って、いい会社に就職するしかないと思った。




けれど…高校入学してすぐ、家に借金取りがやってくる。




母は、髪を引っ張られ、引きずり回された。




彼は、腹を何度も蹴られた。




すぐに金が必要だった…




栞は、そんな彼の事情を知っていて、彼に金の取引を持ちかけた。