雨がほんの一時的で止んだのは救われた。土砂崩れなんて起きたらたまらない。




有坂くんの手や爪は、泥だらけで、血も滲み始めた。




「有坂くん…もぉいいよ。助け来るまで待とうよ」




「助けが来ないかもよ?高梨、俺と死にたくないだろ?」




「でも…有坂くんの手…血が…」




砂の壁を引っ掻き続けて、赤黒い血も流れている。




「とりあえず、上に登らないとな…」




「でも…」




「こんな傷…たいしたことないよ…。高梨の傷なんかより…全然……」




「あたし…どこもケガしてないよ?」




「高1の4月…高梨は…深い傷を負った…」




―――ズキンッ

決して忘れることの出来ない胸の奥の傷が疼いた。



どうして…?




どうして有坂くんが


あのこと


知ってるの…?




あたしが男たちに襲われたことは…




絢音たち以外…知らないはず……




「ど…う…して…それ…を…?」




有坂くんは…何も言わずに、砂を掻き続けた…