―――ザザザザザ…ッ…




一瞬、頭が真っ白になったけれど、痛みを感じなかった。あたし死んじゃったの?




「…ってぇ…大丈夫か…?」




頭の上から、声が聞こえた。




あたしがそっと顔を上げると、有坂くんの顔があった。有坂くんは、あたしの身体を包み込んでいた。




「有坂…く…ん」




「痛いとこないか…?」




「…ない」




崖から落ちたけど、有坂くんが助けてくれたんだ。




「ありがと…」




あたしが微笑むと、有坂くんは頭を掻き、真上を見上げた。




「礼を言うのは早いよ。俺ら林の中の深い穴に落っこちゃってんだから…」




「…誰か助けに来てくれるまで待つしかないね…」




「高梨ってやっぱり冷静だな。それか…ここで一緒に死ぬか」




「……やだ」




はっきり言うなと、有坂くんは顔をそむけて笑う。




「…心配しなくていいよ。俺が死んでも…高梨だけは…絶対に助けるから…」




「有坂くん…」




有坂くんは、上に登ろうとして、砂の壁を手で引っ掻き始めた。