「ケン…大丈夫…?」




あたしは、床に倒れたままのケンに駆け寄り、ケンの頬にそっと触れようとした。




「…触んなっ」




ケンは、あたしの手をパッと振り払う。顔も背けて、目も合わせてくれない。




「怒ってる…よね?」




「ったり前だろーが」




ケンは、起き上がって、あたしを置いていこうとする。




「待ってよ、ケン!」




ケンは立ち止まってくれたけど、振り向いてはくれなかった。冷めた低い声で、ポツリと呟く。




「アイツ…どこのクラスのやつ?見たことねぇんだけど…」




「…うちのクラスだよ」




「はっ?」




ケンは驚いたのか、やっと振り向いてあたしの顔を見てくれた。




「クラス委員長の有坂くん…」




「有坂っ!?メガネしてねぇじゃん…」




「あたしも最初わかんなくてさぁ〜。メガネとったらかなりのイケメン……」




ヤバい……口が滑った。この状況でなんてことを…あたしのバカ。




あたしはケンの身体に抱きつく。




「ねぇ…ケン…?ちゃんと断ったから大丈夫だよ?」




「何が大丈夫なんだよ!?キスなんかされやがって…美々も美々だろ!隙があるからそういうことされんだ!」




ケンは怒鳴って、あたしの身体を思い切り突き放した。




「ごめんってば…」




「有坂のやつ、ぜってぇ許さねぇっ」




「やめてよ…ケン…」




今からでも殴りに行きそうな雰囲気で、あたしは必死にケンの身体にしがみついた。




「何でアイツのこと庇うんだよ!?」




「庇うとかじゃないよ…。あたしはケンのことしか好きじゃないよ…?」