――…カラン…カラン



下駄の音だけが、辺りに鳴り響く。夏祭りの後の夜は、とても静か。




「足、痛そうだけど…」




帰り道、蒼は急に立ち止まって、あたしの足の指を差して言った。




足の指は擦りむけ、赤い血が少し滲んでいた。




「…下駄って1年に1回しか履かないから、指の間とか擦り剥けちゃうんだよね…」




あたしがそう言うと、蒼は地面にしゃがみこんだ。




「…乗れよ」




「…なに?いいよ…重いしっ」




おんぶなんて、恥ずかしい…




「その歩く速さじゃ、家に帰るの何時間かかるんだよ?チビ」




「……恥ずかしくない?」




「誰も見てねぇよ」




「……はい」




早くしろというように、蒼が手で合図するので、あたしは、渋々蒼の背中におぶさった。




「…重い?」




「重い」




「おりる〜っ!」




あたしは蒼の背中でジタバタと手足を動かした。




「うそだよ。動くなって…」




本当に意地悪なんだから。


あたしはおとなしく、蒼の首に腕を絡めた。