「絢音…その紫色の花、なに?」




あたしは、紫蘭の花を手に取った。




「…これはね、紫蘭っていうの…。花言葉はね…“あなたを忘れない”」




「ええ言葉やな…」




あたしは、紫蘭の花束を、海に流した。








智也…忘れないよ。絶対に……―――








「誰かの…一番幸せな記憶の中に、自分も生き残っとったら…幸せな人生やと思わへんか…?」




「遊也……」




「せやから…智也への償いや罪やと思わんで、アイツを絢音の中の、幸せな思い出や記憶の中に…生かしておいてやってくれへんか…?」




智也と過ごした教室

智也と遊んだ公園




智也と来たこの海




楽しかった記憶も

たくさんあること




あたしはずっと忘れてたのかもしれない




あたしの記憶の中で

幸せな思い出の中で




智也は、笑ったり

泣いたり




生き続けるよね……―――。