―――……
智也が死んでから、あたしは四六時中、智也のことが頭から離れなかった。
寝ているのか、寝ていないのか、それさえもわからないほどに、あたしの精神状態は普通じゃなかった。
小学校の卒業式のあと、あたしはあの海へと向かった。
蒼が後をつけて来ているのも知らずに。
ザザザーッ……ザザザーッ…――
服のまま海へと入ってく。
『絢音っ…何してんだよっ』
『離してってばっ!!』
あたしの後をこっそり追いかけて来ていた蒼が、あたしの手を掴んだ。
『今ここで絢音が死んだら、俺もおまえと同じ苦しみを味わうんだぞっ!』
『…蒼……』
『死んだのは智也だろ…あれからずっと、おまえまで死んでるみたいだよっ!』
ザザザーッ……ザザザーーッ…――
『…智也はもういないけど、でも…俺たちの中で、ずっと…生き続けるんだよ…っ』
『……っ…ぅぅ…』
『俺が…一緒にいるから…だから死ぬなんて考えんなよ……』
『生きてるのが…苦しいのよぉーっ!』
泣き叫んで、蒼の手を振り切った。冷たい海の中であたしたちは見つめ合う。
『俺だって…智也が死んだこと……悲しいんだよ…』
蒼は唇を震わせ、涙を堪えていた。
『おまえは……智也を悲しんで泣いてんのか…?違うだろーが。今の絢音は…自分が可哀想で泣いてるだけだろ!…弱さから、逃げてるだけだろーが!』
蒼の言葉で
目が覚めた……
泣いていいのは
あたしじゃない……
あたしは逃げてたの
怖くて、現実から逃げていただけ
自分を守り続けてただけ…
蒼は気付かせてくれた
罪と向き合わなきゃいけないってことに
なのにあたしはやっぱり弱くて、あの日から智也を忘れようとしたの。
また逃げてただけなの。