「あのあと…智也から電話がかかってきた時に出ていれば…智也を失わずにすんだかもしれない…」




家に帰って来てから、あたしの携帯に、智也からの着信があった。




蒼が目の前にいたから…




智也から告白されたばかりだったし、蒼に智也とのこと誤解されたくなくて、後でかけ直そうと思ったの…。




ひどいことをした……




智也がどんな気持ちだったか…今ならわかるのに……




小学5年生のあたしには“死”なんて…はるか先の遠いものだと…実感などなかった




重すぎる現実に、あたしは目を背けたんだ…。




「電話出なかったからって…絢音のせいじゃないだろ?」




「…後から担任の先生からこっそり聞いたの」




「何を…?」




「智也は…病気だったって…」




「え…?」




「…あと1年、生きられるか…わかんない状態だったって…智也と智也の親の希望で、普通の生活を送ることにしたんだって…先生はあたしにそう言った…」




未来が欲しくても


手にできない…そんな智也に




あたしは

将来の夢を




笑顔で聞いてしまった




言葉ひとつで


人は殺せるの―――