砂に文字を書いては、波に消され…そんなことを繰り返して遊んでいた。




『絢音さぁ…蒼のこと好きなの?』




『な、いきなり…何?』




『幼なじみっていうだけじゃないふうに見えるから』




『智也…なに言ってるの?そんなことないってば…』




蒼のことを人に聞かれると、恥ずかしかった。まだそんな年頃だった。




ザザザーッ…ザザザーッ……―――




大きな波と小さな波が交互にやってきては、消えてゆく。




ザザーッ…ザザザーッ…―――




『あのさ…、俺…絢音のこと…好きなんだ……』




智也は、一点の曇りもないまっすぐな瞳で、あたしを見つめた。




ザザザーッ…ザーッ……―――




あたしは何も言えなくて、その場には沈黙が流れた。




波の音だけが、砂浜に響き渡っていた……