「絢音…高梨が自殺を図ったことは、おまえのせいじゃない。おまえは最初から何も悪くない…」




「何でそんなこと言えるの…?あたしのせいじゃない!」




「栞が企んだことだ。おまえは何も悪くない」




蒼のまっすぐな瞳は




蒼の迷いのない視線は




時々…目を逸らしたくなる




「あの海に向かう途中…何も覚えてないの…。ただ…暗くて…孤独から逃れたくて…弱い自分さえも憎くなってくる…。美々ちゃんもきっと同じ気持ちだったはず…」




消えてしまえば


ラクになる…そう思った




「高梨を暗闇から連れ出してやるのは、俺らしかいないだろ…?」




「……蒼」




「おまえは…もっと自分を想ってくれる人を大切にしろよ…。おじさんもおばさんも…ケンや高梨も…みんな絢音のこと好きなんだ」




自分を大切にしてくれてる人…




「悲しませんな…俺のことも…」




蒼の手は、あたしの顎に触れ、ゆっくりと顔が近づいてくる。




そして、蒼はあたしにキスをした…――。




その瞬間、涙がこぼれ落ちた。




温かい触れ合うぬくもりは…全身を伝ってゆく…――




“悲しませるな…俺のこと”




蒼の言葉が頭の中で繰り返され、そっと目を閉じた。




ごめんね…蒼




泣いたのはあたしだけじゃなかった




蒼も同じだった




誰もが弱さを持ち合わせている




蒼の頬にも、一筋の涙が流れ落ちる。




「…俺のために…生きて……」