美穂は優子に何かきついことを言われたんだろう、少し落ち込んだ顔で現代文の教科書に目を落としていた。その横顔に向かって、私は心の中で「頑張れ、美穂!」とつぶやいていた。


でも、そんな気持ちと裏腹に私はその日から百人一首クラブに以前にもまして打ち込むようになっていった。その間は美穂のことは考えなくてもすむ。私は私の時間を一生懸命生きることで、優子の言葉や、美穂がつらそうにしている姿を忘れよう、乗り越えようとしていたのだった。