「優しい子だったからね。大学に入る前に別れちゃったけれど、ずっと好きだったよ」


法事の後、優子の企画で開かれたプチ同窓会の席で、石橋君は生ビールを飲みながら話してくれた。今は職場に彼女がいるけれど、優子のことは特別なのだという。だから、今回も法事に出席するのに何もためらいはなかったという。


一緒に登校したり(下校時はもっぱら私と一緒だった)、休日に映画や遊園地に行ったりしたこと。バレンタインデーに、美穂がくれた手編みのマフラーに往生したこと。


きっと、私の知らない美穂がいたんだろうな。でも、私は石橋君の知らない美穂を知っている。そして二人で共有できる美穂とは、おとなしくて守ってあげたい女の子だった、ということ。