美穂は自分はきちんと授業の予習をしてきているのに、やっていないふりをする。予習してきたならしてきた、とどうして言わないのか。話だけこちらに合わせられても、かえって馬鹿にされたみたいで頭にくる、というのが優子の言い分だった。


美穂の人の良さと、その場をうまく納めたい、という気持ちが裏目に出た格好だった。これがもし、石川さんなら、優子もこんな風に過敏に反応しなかったのだろう。


「美穂って中学の頃いじめられていたっていうじゃない。こんなんだから、いじめられるんだよ。あ~もう、イライラする」
「いじめって、シカトのこと?」
「そんなもんじゃないよお。上履き隠されたり、大勢に取り囲まれてののしられたりしてたって、同じ中学校の子から聞いたよ。沙代、知らなかったの?」