空港からバスに乗ってJRに乗り換えて降りた駅からまたバス。


窓から見える風景は、新しいビルやマンションが建って帰省するたびにその表情を少しずつ変えていく。


でも、車窓から見えるマルエイの看板は昔のままだし、自宅付近のバス停の前は空き地のままでほっとする。魚屋さんや八百屋さんも、そのまんまのたたずまいで「お帰りなさい」と言ってくれているみたいだ。


大学進学で自宅を離れ、就職もその土地で探した。親は「帰ってきなさい」って怒ったけれど、美穂のいない故郷に自分だけが取り残されるみたいで嫌だったから。


なんだか感傷的になっちゃったので、「ただいま」は意識して明るい声を出して言ってみた。母親は、あれだけせっついたくせに「あら、早かったわね」とつれない。まあ、そんなものか。