「沙代ちゃん、本当に美術史なんか勉強するのでいいの?お父さんとお母さんは、地元の短大でいいから、そこで家族で一緒に暮らしたいのに」


母親は、こんな調子でことあるごとに私を説得しようとしていた。学費その他を考えると、そりゃあそうだよなあ、と申し訳なかった。けれどももう、他の選択肢なんて考え付かなかったのだ。