――刹那、


「秋田先輩さ、性格悪いッスよね。」

「え?」


コートのフェンスを抜けたとき、不意にかけられた声に辺りを見回す。

にしても、“性格悪い”だって?
確かにその通りだけど、なかなかズケズケと言ってくれるじゃない。

フェンス横にある大木、その木陰で木にもたれ掛かり、いたずらな笑みを浮かべる男の子の姿がそこにはあった。


「…藍前君、いきなり失礼だね。」


あたしがそう返すと、藍前は白い帽子を深くかぶり直す。そして刹那、彼の顔から笑みが消えた。


「そっスか?だって俺、先輩たちの会話、全部聞いちゃったし。」

「………そうなんだぁ。」


あたしとしたことが…。
藍前にまで会話聞かれちゃうなんて、ちょっと失敗。