ガシャン。
「…っと。じゃ、このイスを全部出して並べてね」
目の前には大量のイス。軽く1000はある。
もちろん始めて見る量、腰が抜けるかと思った。
「ぜ、全部…ですか」
「何人来るか分かんないからね~」
そう言って武田先輩はてきぱきとイスを並べていく。
ガシャン…ガシャン…
大きな空間に、パイプイスの音だけが淋しく広がる。
「…………」
「…………」
だいぶ並べたが、イスはまだまだ減らない。2人じゃ無理もないか。
「…あの」
長すぎる沈黙に耐えきれず、思い切って話しかけてみた。
「え、なぁに?」
話しかけたはいいが、話題がない。
どうしよう…。
「?」
「あ…えと、役員は武田先輩1人なんですか?」
「あ、そうだねぇ、来ないね。本当はあと7、8人来るんだけど」
おかしいとは思わないのかな?
「あ、『武田先輩』じゃなくていいよ?普通にタメ口でいいからね?」
「え!そんな、先輩にタメ口はっ!」
ありえない!そんな事したら確実に目つけられて、1日で高校生活が終わってしまう!
「ん~…と?先輩にタメはダメだって事、だよね?」
「はい…」
「へへ、じゃあ『先輩命令』!あたしを名前で呼んで、タメ口きく事~」