声に気付いたその人は、足を止めてゆっくりとこちらを振り向く。

ぼくが探していた人だ。暗くって、表情はよく見えないけれど、わらっているような気がする。

優しいような、冷たいような、暗くってよく分からない。


「行かないでよ!ずっと一緒にいたいのに!」


走ったばかりの、かすれた声でぼくは言う。



反対に、その人の声はひどく落ち着いた声だった。

『わたしも、ずっと一緒にいたいけど。
でもそれは、できないから。
いま残っても、あした行く。
結局何も、変わらない。

だから、いま、行くの。』