「ちょっと…俺飛び下りてみようと思います。そっから。」

灯夜は窓をみて言った。
教師達は当然、呆気にとられた様な顔をする。
そのうちに窓まで移動し、窓枠に足をかける。準備完了。

「死んだら自殺扱いされるでしょうが、一沙のすぐ後だし警察もちょっとは動きますよね。
生きてたら、俺は直に警察にこの学校の全てを話します。
どっちにしろ、この怪我ですから只事じゃない筈ですしね。」

「ふざけてないで降りろ!」

教師は慌てふためいた。

「じゃ、そういう事で。」

灯夜は教師に笑顔で言い放ち、飛んだ。
―…大丈夫!なんとなく死なない自信がある!
物凄い速度で落ちながら、灯夜は自分に言い聞かせた。
自分は戦ったのだ。戦った相手が正義か悪かは定かじゃないが、これはきっと誇れる事なのだ。
薄れる意識の中、灯夜は一沙の笑顔を想った。誰かが灯夜の腕を引いて助けようとした。そんな気がした。







ある日、とある新聞に体罰問題の記事が取り上げられていた。
それによれば、体罰を受けた男子生徒が自殺をし、後を追うかの様に飛び下りを計った男子生徒が全身麻痺になったという事だ。
全身麻痺になってもどうやら聴覚と視覚は残ったそうで、学校側から多額の医療費が払われたという。
この事件はニュースでも多く取り上げられ、嘘か誠か計り兼ねる憶測が飛び交った。
学校は今やボロボロの状態だという。これは、命を懸けた2人の望んだ結果なのだろうか。

ある病院の一室。その中で横たえる少年と、母親と思しき女性がテレビの映像と音声を流している。
テレビの内容は例の体罰事件。彼は、傍目にはわからないだろうがテレビの音声に聞き入っている。

―…勝ったのだ。あとは成り行きに任せようじゃないか。

彼は満足そうに口許を緩め、底無しの暗闇に身を委ねる。


一足先に飛び立った仲間の元へと向かったのだ。