「…諏訪部(一沙)はどうした?」

出欠確認が始まった。まぁ欠席者なんてろくにいないから必要ないだろうが一応あるのだ。
しかしなんと、あの健康が取り柄のような一沙がいないのだ。
今朝の様子からしておかしかったが、まさか来ないとは。

「お前知らんのか?同室だろ」

担任は灯夜に聞いた。

「…様子おかしかったんで体調不良だと思いますよ。」

「チッその位で…只のサボリじゃないのか?」

「先生!」

突然ドアが乱暴に開けられ、一人の教師が飛び込んで来た。
担任を廊下に呼び込むと暫く話をし、教室に戻って来た担任は酷く慌てた様子だった。

「大月(灯夜)!ちょっと来い!」

担任は灯夜を呼んだ。今度はなんだと重い腰を上げると、担任はまた廊下に出てドアを閉め、教室に声が漏れないようにした。

「あー…と、気落として変な真似するなよ。」

「?」

「諏訪部が、寮の窓から落ちて死んだそうだ。」




何ソレ?




彼は真っ直ぐで、あまりにも真っ直ぐで、己の意思を貫く奴で。
そんな事をする馬鹿か?
いや、それとも意思を貫く為に?

「あ待て!変な真似するなって言ったろ!」

灯夜は思わず駆け出した。ひたすら寮を目指して。
寮の5階。部屋に入ると開け放たれた窓から風が入り込んで白いが少し黄ばんだカーテンが揺れていた。
風によって部屋中にプリントやらテストやらが散らばって、やけに雑然としてみえる。
灯夜は窓に歩み寄った。窓から下を覗いてみれば芝生の地面に血の様な紅い斑点が広がり、一沙自身の姿は何処にも無い。

「…収容済み?」

息を切らしながら灯夜は呟いた。
部屋を見渡してみると、一沙のベットに一つ折りされた紙が置いてある。
灯夜は何か憑いた様にその紙をつかみ取った。
焦る手で紙を開くと、そこには走り書きされた彼の文章があった。


『後はまかせた。』


その1文だけ。いくら読み返してもソレしか書いてなかった。
彼は挫折してしまったというのか?それとも、俺が言ってしまった様に世間に問題視して貰うつもりなのか?
だとしたら、原因はおれではないか。

「…どっちでも許せるかよ…!」