「あーっ!紗季ちゃん、俺のことばかにしてるでしょっ」
剛弘が席を立ち上がって紗季に言い寄る。
紗季は「そんなことないって」と答えるが、どこか笑いを帯びている。
そんな紗季を見た剛弘は「もーっ!」と頬を膨らませながら、大人しく座る。
「でも、3年だったら5組だよね。ここ他のクラスより人数少ないし」
落ち着いた剛弘を見ながら紗季が話す。
剛弘の顔がパッと明るくなったのがわかった。
そんな剛弘を見て、海輝も空も自然と顔が綻ぶ。
「もしこのクラスだったら空の隣だな。空いてんのそこだけだもん」
海輝が体を後ろに向けて言う。
空は海輝の言葉には返事をせず、立ち上がった。
そしてドアの方へ歩き出す。
「あれ、空どこいくん?」
空は欠伸をしながら教室を出て行った。
「なんだよ。シカトすることねーじゃん」
海輝が頬を膨らます。
「空のことだから、さぼりでしょ。聞く必要ないじゃん」
空が出ていったドアを横目に言う。
紗季の言ってることは正しい。
聞く必要などない。
だから答えない。
ただ、それだけのこと。
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