帰ったらって。
 あたしの家に上がりこむ気?
 部屋めっちゃ汚いから無理だし。

「あ」

 彼がようやく足を止めたのは、あたしの家から5分程離れたところにある公園だった。
 平日の午前中なだけあって子供連れや主婦がちらほらお喋りしている。

「ここでいいか」
「え。あたしこの公園嫌いなんだけど」
「じゃ、行くよ」

 また無視かよ。
 仏頂面のまま腕を引っ張られながら公園に足を踏み入れる。

 途端に周囲から好奇の視線が集まった。
 片方は仏頂面の女子高生。
 腕を引っ張っているのは、どこか仙人めいた雰囲気を漂わせる外国人(イケメン)。
 まるでちぐはぐの組み合わせ。

 だが彼はそんなことはお構いなしにどこかを目指してあたしを引っ張り続ける。
 どうやら目的は噴水のようだ。

「若干濁っているか」

 どうやら水が汚いことが気に入らないらしい。
 市営の公園にそこまで高いレベルを要求するのもどうかと思うが。

「ま、いいか」

 それより、あたしはこの公園に長居したくない。
 嫌な思い出しかない、この場所。

「じゃ、いくよ」

「どこへ?」

「帰るんだよ」

 ぐいっと腕をまた引っ張られて。
 彼の胸の中に抱き寄せられる。

「スロウに」

「どこそれっ!」