「あきる!」

「あー、恵」

 駆け寄ってきたのは、同じクラスの恵。
 がさつなあたしと違って清楚で美人。
 男子からのの人気も高い。

「あきるが寝るなんて珍しいねー」

「なんか、最近すごく眠くて気がついたら寝てるんだよね」

「ふーん、春眠暁を覚えずってやつ?」

「そうかもね」

 笑いながらあたしは心の中で否定する。
 そんな心地いい眠りなんかじゃない。
 同じ夢をここ最近繰り返し見ているが
 ぎゅっと心臓を鷲摑みにされるような。
 頭の奥底にある芯をかきまわされているような。
 気持ち悪い胸騒ぎだけが日に日に強まる。
 
 女の子も男も知っている、気がする。
 でも思い出せない。

 ざわざわが収まらない。

「あきる・・・?」

 はっと我に返ると、恵が心配そうにあたしを見ていた。

「顔色悪いよ?だいじょうぶ?」

「あ。う、うん。だいじょうぶ。全然平気!」

「そう?でもほんと真っ青だよ。保健室行ったほうがいいんじゃない?」

「そうかな?」

「うん、いっといでよ。先生には言っておくから」

「じゃ、一応行ってみる。ありがと」

 あたしと恵は手を振って別れた。