「…ぷっ…あははっ」
少し離れた位置で笑う佐山は笑った顔のまま、紙袋を投げた。
反射的に受け取ったその中には、見慣れたパンと紙パックの牛乳。
「駄目ですよ、二日酔いでも、ちゃんと食べなきゃ。」
離れた距離を、佐山はいとも簡単に縮めてしまう。
俺のすぐ隣に寝転がり、空を見上げたまま大きく息を吸った。
「…いい気持ち」
「佐山は昼飯食ったのか?」
「さっき、屋上で」
「そうか」
「早く食べてください。それ買うの大変だったんだから。」
急かされてパンにかぶりついた俺を見て、また笑う。
「…佐山、笑いすぎ」
「だって、そんなに慌てて食べなくても…」
「お前が早く食えって言ったんだろ」
「そうですけど、ごめんなさい、…あははっ」
佐山の笑い声がまた響く。
「今度は何だ、俺の顔が面白いとか言うなよ、落ち込むから」
「だって…先生の食べ方、リスみたいで可愛い。」
…リス
リスってあの、クルミを口いっぱい頬張るアレか
しかも可愛いとか、普通に言うなよ
意識せずに言ってくれる佐山に悔しくなった。
「佐山もリスになれ」
「えっ…」
一瞬にして余裕を無くした佐山に、度が過ぎた行為だったと気付いた時には、二人の間に沈黙が流れていた。