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昼休みの開始と同時に、女子生徒達が押し寄せる。
差し出された手には、可愛い布に包まれた箱が乗っている。
受け取らないことを知っているはずなのに変わらないこの光景。
いつの間にか佐山の姿は教室から消えていて、意識してドアを見ていた自分に気付いた。
一緒に昼飯を食べる約束をしていたわけでもないのに
自然に目で追うのが習慣になりつつあるヤバすぎる現状と、教師と生徒である現実。
久々の夜遊びで出し切ったはずのモヤモヤがまた湧き出てくる。
…今日もシンの顔を拝むことになりそうだ。
生徒の群で埋まった購買の列に並ぶのはいつものことで、目当てのパンも牛乳も、逃したことなんかなかったのに、そこに入る気力がない。
わかってる原因は…寝不足と二日酔いの体、そしてそれにまとわりつく割り切れない感情。
中庭に立ち寄って、自販機で買ったミネラルウォーターを一気に流し込み空を見上げれば、若葉の隙間から眩しい光が差し込んでくる。
みんなに平等に降り注ぐ太陽の光でさえも、このモヤモヤには勝てないらしい。
…はぁ…
腹は減らねぇし、なんかモヤモヤするし
溜め息…
陰った芝生に寝転んで目を閉じて、心を無にしてみようとするも、浮かぶのは…
「…なんか悩み事ですか?」
「佐山っ…」
飛び起きた自分の顔と、覗き込むように屈んだ佐山の顔のあまりの近さに、慌てて距離をとった。