「んな驚いた顔すんなよ、聞かれちゃまずいのか?」
「紀之じゃ〜ん、めっずらし〜、学校で優梨と紀之の2ショット。」
はしゃぐ理奈は、私と紀之を交互に見ながら、ポケットからタバコを取り出し火を付けた。
「お前は?」
「いらない…、ここ学校だよ?」
タバコを差し出す紀之の手を通り過ぎ、屋上の死角から抜け出した。
「さすが言うことが違うね〜、優等生は」
さっきから突っかかるような言い方の紀之に、理菜が慌てて仲裁に入る。
「ちょっとちょっと、あんたたちケンカでもした?」
「ああ?ケンカなんかしてねぇよ。ただ…、アイツの「お気に入り」の佐山優梨が気に入らねぇだけだ。」
不愉快そうな声で答える紀之、質問の答えは理菜じゃなく私に言っているみたいだ。
「バイトの帰り…送ってもらってるらしいじゃん。」
「……」
何も答えない私の横で、理菜がこの話題に食い付く。
「えっマジ?優梨と秋吉ってそういう関係なわけ?」
「…どんな関係かは知らねぇけど、沙紀の話じゃ仲良さげに歩いてたらしいぜ。」
…小高沙紀に見られてたなんて知らなかった。
「吹奏楽部ん中じゃ秋吉のファンクラブまであるらしいしなぁ、…でも先生も懲りねぇよなぁ…」
言葉を切って、私の前に立つ紀之はニヤリと笑って言葉を続けた。
「アイツ、前に生徒に手ぇ出したとかで、問題になったらしいぜ」