久し振りに来た俺に、いつものカクテルを出してくれたバーテンは相変わらずの二枚目だ。


「…差し入れですか?」


言われてテイクアウトした紙袋を持ったままだったことに気が付いた。


「あ、まぁそんなとこ…」


無言でそれから目を逸らしたバーテンには、次から次へとオーダーが告げられていく。

彼には飲食物を持ち込んだ不良教師を気にしている暇は無さそうだ。




甘ったるい声で、それよりも甘い酒を注文する女どもは、どうみても高校生くらいにしか見えない。


「ねぇそろそろ行かないとヤバくない?」


「シンさんの始まっちゃう」


「マジで?最悪〜」


グラスを手にカウンターから離れた後ろ姿に佐山の影を重ねた。



…佐山にはこんな場所は似合わないな。




「遼太郎〜っ、やっぱ来たな。お、懐かしい〜。これ彼処のクラブサンドじゃん。」


冷えきったクラブサンドをかじりながら、サングラスの隙間から同じ歳とは思えないヤンチャな顔を覗かせる親友。


こいつにはこんな所で油を売っている余裕は無いはずだ。



「お前、出番なんじゃねぇの?シン」