佐山の家から自分のアパートまでの然程遠くない道のりを歩く。

その間も冷めない俺の昂りは、とても生徒を送り届けた後の教師の心境とは言えない。

…振り返るのが怖いような、そんな感覚さえあった。


このまま部屋に帰っても清々しい朝なんて迎えられそうにない。



薄暗い街灯の中、どちらともとれる約束を交わした親友の顔を思い浮かべ、人の波に早く呑まれたいと思った。





***

久し振りに訪れたその場所は、独特の空気を漂わせていて、地べたに座り込み酔い潰れている若者もいれば、狂ったようにフロアの真ん中で躍り狂っているヤツもいる。


酔い潰れていた女が近くにいた男に担ぎ上げられるように階段に消えて行くのが見えた。


あの二人が連れなのか、初対面なのかなんて誰も知らない。



誰が何をしていても誰も気にしない、そう言う場所だ。


こんな所に佐山を連れて来るわけには行かない。


それにこんな場所に生徒がいたら家に帰すのが俺の仕事だもんな。


自分の立場を再確認させられたような気がした。