先生の顔を引き寄せて近付いた距離に、吸い寄せられるように触れた唇。
磁石みたいにくっついて、何度も確かめるうちに、もっと感じたいと思った。
先生の気持ちまで吸い込んじゃうくらい夢中でキスをした。
嫌がるでもなかった先生は、合わせたままの額の温かさを一瞬で否定する言葉を放つ。
「早く家に入れ。明日から体育祭の準備で忙しくなるんだから、ゆっくり休め。」
「先生…」
…無かったことにするつもりなんだ。
私が動かない変わりに、先生は後ろに下がって私から離れていく。
「頼りにしてんぞ、学級委員。」
先生の後ろ姿はずっとそのままで、振り返ることはなかった。
それがこんなに苦しい
少し前までの自分にはなかった気持ち
…束縛…嫉妬…恋…。
先生はさっきのキスに軽蔑したのかな
こんなことしちゃう生徒はやっぱり迷惑なだけなのかな
少しでも特別だと思われてるなんて自惚れだったのかな
でも先生が見てるのは、私じゃないんだ。
頼りにしてる生徒…それ以下でもそれ以上でもない。
「今日ので…それ以下になっちゃったかな。」
落ち込む自分が笑える
相手に嫌われるかも知れない怖さは、初めてそれを感じた私には、消化しきれない感情で、どこかでバランスをとらないとその気持ちに潰されそうだった。
♪♪♪♪
ディスプレイに表示された名前を見て、なんてタイミングのいいヤツなんだろうと思った。
『バイトおつかれ〜』
「………」
『もしもし優梨?声聞こえねぇぞ』
「…紀之…今どこ?」
いつもの調子でいつもの場所を告げる紀之
「…シンさんの出番終わってからでいいから…、こっちに来て」