ガッチリ俺の背中に回された佐山の腕



「…今日はこれで許してあげる。」


「今日はって…、そんなんじゃ心臓がもたな…っ…」



一瞬何が起こったのか分からないほど突然に、佐山の唇が俺のに触れた。



…え…えぇっおいっ


俺の首筋を掴んで、シャツの襟を引きながら、身長差を埋めるように近付いた佐山が、僅かに唇を離しただけの距離で俺を見つめる。



その表情が、普段の彼女からは想像も出来ないほど色っぽくて思わず生唾を飲み込んだ。


それに気付いた佐山は、笑みを浮かべて俺にキスを降らせる。


何度も

何度も



…チュッ…チュッ…


「…こらっ…やめ…」



首の裏にあった筈の佐山の手が、いつの間にか俺の後頭部に置かれていて、唇が触れる度に濡れた音が間近に聞こえてくる。


深いキスよりある意味…


興奮…


じゃなくて…ヤバイって…


「っ…!」


…舌…入れてるよ…


驚いて開けた視線が佐山の視線とぶつかる。


何してんだよ…



思いっきりいけないことをしている教師と生徒の俺達。


動揺する俺に何度も舌を絡めながら、甘い息を逃す佐山には、禁断の域に足を踏入れている自覚は無いようだ。



されるがままの俺も大概駄目人間




キスが巧い女はアッチが巧いよりも手に負えない。


ハマったら最後…


どうでもいい俺の中の教訓


その前に教師としての誇りを棄てちゃマズイだろ



ヤバイ…


マズイ…


そう頭の中で繰り返しながらも、伊達に歳を重ねてきたわけじゃない。


大人として、教師としての理性が俺にはあるんだ。



顎を引いて唇を離して、額を合わせた。


佐山の唇が光って見えるのも、乱れた息も気のせいじゃなくて、固めた理性が崩れそうになるのを必死で抑えた。



「…佐山、さっきの質問の答え、イエスだよ」



…キスで濡れた彼女の唇が開く前に、言葉でキスを消さないと、戻れなくなりそうだった。


「先生は優等生が好きだ。…優等生はこんなことしないよ。」