「………」


「………」



好きってアレだよな


この場合…そういう意味だよな


いや待て…


今時の高校生は、大して可愛くもない物でも「可愛い〜」なんて言うじゃねぇか。



そうだその類いのもんだよ



真に受けて恥ずかしい思いをするより、佐山のノリに乗った方がいいんじゃないか?



相変わらず佐山は、真っ直ぐ俺を見ていて、それが余計にまともな判断力を失わせる。



沈黙が長くなればなるほど追い詰められていく。

早く何か言わないとこの空気に飲まれそうだった。




「先生も佐山のこと好きだぞ〜」



「………」


…あれ


…外した?





「佐山?」



「先生…」



「…っ!おい」




抱き付いてきた佐山の感触は、まさしく女のそれで、佐山が制服を着ていなかったら、自分は恐ろしいことをしでかしていたかもしれない




「佐山…、冗談が過ぎるぞ、やりすぎだ。」



人通りの少ない時間でも、誰かに見られない保証はない。


すぐそこに佐山の家が見える状況で、これはいくらなんでも…



「冗談なんかじゃないです…。先生も好きだって言ったじゃないですか。」



「それは…」




佐山は俺を見るために上げた顔をまた胸に埋めてくる。



「と、取り敢えず…離れて」



「どうして?」



「どうしてって…」


離れるどころか、縮まる距離。



…あぁ…誰か助けて