俺を見る佐山がいつもと違うから


「何か欲しいものでもあんのか?」


「先生…」


そう言われて心臓が止まるかと思った。

ただ俺を呼んだだけのことなのに


「作ってくれる人いないんですか?」



うまく逃げたつもりが、佐山の視線は俺を捉えたままだ。



「先生って理想だけは高そうですもんね。」


「そんなことないぞ」


言った後で、逃げたはずの道にまた引き戻されたことに気付く。



「じゃぁ、どういう女の人がタイプなんですか?」



「…っ、」



こんな質問、教師になりたてのころは日常茶飯事だったじゃないか

しっかりしろ遼太郎


普通に答えればいいんだよ

当たり障りのない答えを


「あ、好きになった人がタイプとかそう言うのなしですよ。」





にこっと笑う佐山は、楽しんでいるように見えるけど、その目は真剣で、意図が読めない。



「先生、早く答えて下さい、もう着いちゃいます。」



「聞いてどうするんだ?」



「それに近づけるように、そうなれるように努力します。」


「…、」


言ってる言葉の意味、わかってんのか?


…心臓が煩い



黙り込んだ俺に佐山は、トドメの一撃をお見舞いしてくれた。





「私…、先生のこと好きなんです。」