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「優梨ちゃんブレンド2つあがったよ。」
「は〜い」
不純な動機で始めた喫茶店のバイトも、人当たりのいいマスターのお陰で楽しく出来ている。
「お待たせ致しました。」
ソーサーを置くのも様になっている気がする。
「おっ、頑張ってるな佐山」
「いらっしゃいませ。」
疲れた顔で、特等席である窓際の席に座る先生
「いつものですね。」
「おう」
「今日は遅かったですね。」
「ああ、大会近いからな。」
「一応、顧問ですもんね。」
「一応は余計だろ。」
こんな会話でさえも、先生との距離を縮めてくれるように感じる。
おしぼりで、顔まで拭いちゃうオヤジな先生も。
煙草を加える慣れた手付きも
私だけ知ってるみたいでドキドキする。
もうすぐ上がりの時間で、先生のオーダーをマスターに伝えたのはさっき
それがすごく残念で、感情を声に出さないように、笑顔を作った。
「じゃあ先生、どうぞごゆっくり」
「…あ、佐山」
「……?」
「さっき頼んだのテイクアウト。今日は疲れたから、家で食べることにするよ。」
にやける顔を抑えようとしたけど、嬉しい気持ちが大きくて、
「じゃ、今日も一緒に帰れるってことですか?」
こんなこと言う私も私だけど
「まぁそうだな、通り道だからな」
素直に嬉しくなっちゃうんだから仕方がない。