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黒板に書いた数種類の項目の中で、花マルのついた競技名。
…人間キャタピラ…
書いてて笑いそうになった。
段ボールで作った大きな輪の中で四つん這いになり、キャタピラのごとく進んでいくらしい。
…もっとマシなのありそうなもんだけど、
クラス対抗の競技には、担任は有無を言わさず強制参加。
それなのに、
「面白そうだな〜やろうやろう」
乗り気な先生は、「佐山もやりたいだろ?」なんて言うし
結局決まっちゃったじゃない…人間キャタピラ。
はしゃぐ顔は無邪気だし
全然先生らしくないし
近付けば近付くほど新しい発見の連続。
だからかな、もっと、もっと知りたくなる。
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「佐山さん、これ見てもらってもいいかな。」
「うん、いいよ」
物理のノートを持ってくるクラスメイトに苦笑い。
…物理の先生、すぐそこにいるんですけど
当の本人は、小高沙紀と話している。
吹奏楽部の顧問である先生と、その部員である彼女の2ショットは、普段からよく見る光景だ。
彼女と話す時の先生の笑顔は、私に向けるものと同じで、そんなの当たり前なのに、見ているのが嫌になった。
初めて感じた、興味とも、好奇心とも違う感情。
それがなんなのか、その時の私にはわからなかった。