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「体育祭とか、超めんどいんですけど」
「まぁ、そう言わずに。まだ日にちあるし、放課後トレーニングでもする?」
「冗談でしょ。ていうかさ、昨日、シンさん回したんでしょ?あ〜、行けばよかった」
「しーっ、理菜、声大きい」
理菜の口を押さえる私と、それを面白がる理菜は、廊下にいた生徒達の視線を一気に浴びた。
中学からの友達の理菜は、昨日行ったクラブに私が出入りしていることも、紀之とのことも知っている唯一の女友達。
ほとんどと言っていいほど学校に来ない理菜は、出席日数もテストもギリギリで、私はいつもヒヤヒヤする。
「ねぇ、優梨、アレヤバくない?」
理菜の指差す方にいたのは、学年の中で一番美人だと噂されている彼女。
「小高さんがどうかした?」
「…やっぱりまだ知らないの?…小高沙紀って…、紀之の今の彼女だよ。」
「…へぇ…そうなんだ」
視線を感じたのか、小高沙紀がこっちを見た。
「佐山さん、清水さんおはよう。」
「おはよう」
にっこり笑顔を私達に向けて、教室の中へ入っていく。
「何かムカつく…」
「理菜、聞こえるって、」
「…だって見下してるみたいな目で見てた。」
「気のせいだって…。彼女はいつもあんな感じじゃない。」
「アイツ、かなり紀之にメロメロらしいよ。もし優梨とのことがバレたら…」
「…バレると思う?」
紀之とは別のクラスだし、小高さんとはクラスメイト以外の付き合いは一切ない。
それに、ここにいる時の私と紀之とでは、噂にもならないだろう
眼鏡を中指で上げて理菜を見る。
「……。でも勿体無いよ、いつもの優梨ならあんなのより全然イケてんのにさ」
「…理菜」
「…ごめん。」
付き合ってるとか付き合ってないとか、可愛いとか可愛くないとか、そういうのに囚われるのはもう嫌だ。