音を立てる紀之の唇と、焦れったいくらいの指の動きに、次の刺激を求めて腰が揺れた。
口へ付けようとした煙を出す指の先を制して、代わりに紀之の舌が私の唇をなぞる。
キスをしながらタバコを消す紀之の手が見えた。
その仕草が、昼間の先生と似ていて、帰り際の先生の顔が浮かんだ。
「…優梨…」
「…はぁっ…」
乱れる呼吸と、甘い声
交じり合う瞬間に、熱い息を吐く紀之に、私の奥が熱くなる。
それを感じた紀之の顔が歪むのを見るのが好きだ。
快楽を得た色気のある顔
愛してるとか愛しいとかじゃなく
その顔が好き
『好きだからエッチする』の"好き"とは少し違う
…それなら…好きな人とするエッチはもっと気持ちいいのかな
「…はぁっ…俺…もぅ」
「…ああっ…っ」
早くなる動きに頭の中が白くなる
紀之の手が髪に触れて、限界が近付いていることを告げた。
「…っ、優梨…キス…」
「…んっ…あぁっ」
首に腕を絡めて、唇を重ねた瞬間、私の中で紀之が大きく揺れた。
力の抜けた紀之の体に腕を回して、呼吸が落ち着いていくのを待つ間
また浮かんでくる先生の顔
…先生としたら…
…どうなるんだろう
ベッドの中での先生…
「優梨…何考えてる…?」
「…えっ」
「そんなによかったか?」
「ちがっ…んっ」
答える隙もないくらいに強引なキスをして、紀之の唇が下へと移る。
「っ、ちょっと…また?」
彼女と円満な紀之のどこにそんな元気があるのかといつも不思議に思う。
…外が明るくなる前には帰ろう
…帰ったら少し眠ろう
寝不足でバイトに行けなかったら困るから。
ベッドの軋む音を聞きながら、そんなことを考えていた。