「お前も食えよ、見てるだけじゃ腹いっぱいになんねぇぞ。」



顔の前にあるピザにかぶり付く。


「自分で持てよ…」


「おいしい」


大好きなチーズがトロっとして、大好きな赤いソースがよく合ってる。


紀之の手まで食べちゃいそうなくらいおいしい。


「優梨、食べ方エロイ。」


「だっておいしいんだもん」


「……ったく、お前は」



紀之が私の手を引いたら、付いて行く。




「優梨…、…」



周りが煩くて、何を言ったのかは聞こえなかったけど、紀之は私の手を握った。





手を引かれるまま、通り過ぎるフロア


抱き合っている男と女

しゃがみこんでいる人

時間を共有してる赤の他人。


関心あるようなフリをして、みんな無関心なんだ。


ここに一人でいたらきっと…消えてしまいたくなる。


無意識に紀之の手を強く握っていた。





電車の中から視界に広がるチカチカの街を見ていた。

そんな私とは反対に紀之はシートに座り、イヤホンをして目を閉じた。



終電間近の車内は人もまばらでシートもガラガラ。


入り口の近くに立って、紀之のイヤホンから漏れる音を聞きながら、景色に溶ける自分の顔をぼんやりと見ていた。