しばらく呆然としていた私は、とりあえず宿屋に戻ろうと判断した。

しかし。

(宿屋、どっちだろう…?)


ガルンの後を付いて歩いていたので、道を覚えていない。

が、ここでこうしていても、何も変わらない。

仕方なしに、さっきまで歩いていた方向へと、私は歩きだした。


++++++++++


一向に、宿屋にも知っている場所にもでない。

(疲れたし、お腹がすいた。)

日は既に沈み、逢魔が時の道を人々は家(もしくは宿や酒場)へと向かう。

ぼんやりしていた私は、後ろから来た人に気付かず、突き飛ばされ、尻餅をついた。

「きゃっ。ごっ、ごめんなさい!」

高い声が上がり、柔らかな手が差し伸べられた。

掴まって立ち上がる。

萌葱色の長い髪と、茶色の澄んだ瞳。

ガルンと同じか、少し下くらいの華奢な女の子が、そこに立っていた。

「お怪我、ありませんでした?」

彼女は、正統派美少女の微笑みを浮かべる。

美少女は、セリと名乗った。
続けて、私も名乗ると、セリはニコリと微笑んだ。

「あたし、命石を無くしてしまって、中央広場に行くところなんです。」