「お嬢様が手ぇあげたらアカンやろ……な?」
関西弁のその人は、囁くように話す。
そしてにこりと笑うと、お姉様がたは頬を紅くして「はいっ櫂様」なんて言った。
カイって言うんだ。
サマ付けってことは、この人も人気者なのかな。
「今日は見逃したるから、もうせえへんって約束してー」
『櫂サマ』が頭を撫でると、
「「「は…ぃ…」」」
わお。
お姉様がた、メロメロ。
私がボケーッとそれを眺めているあいだに、そこにはもう私と『櫂サマ』しかいなくなっていた。
私に向き直り、明るく笑うと
「大丈夫やった?」
なんて言って。
爽やかだな。
早坂爽に名前をもらうといいよ。