お嬢様……。
普通の男は自分の彼女のこと「お嬢様」なんて言わないよね、うん。
……じゃあ、あれは、何だ。
恋人同士じゃなくてもキスするのか。
それは、なんか、乱れたもんだなぁ、日本も。
そんなことをしみじみ感じていたら、お姉さんと男の人は門の中に入っていってしまった。
私は重くため息をつく。
あぁ……いろいろ聞きたかったのに。
なんでネクタイの色が違うのか、とか。
ふたりの関係は何なんだ、とか。
どうしたらそんなにキレイになれるのか、とか………。
……これはあれですか。天からのお告げですか。
「さっさと門の中入っちまえ」っていうお叱りですか、神様。
「まあ、うだうだ言ったってどうにもなんないしなぁ……」
うん。
行きますか。
深呼吸をして、前を見る。
遠くに見える大きい建物。今日から私が通う学校だ。
「よしっ!!」
大いなる一歩を踏み出した、その瞬間。
「「「「きゃあぁああぁああーーっ!!!!」」」」
黄色い叫び声が辺りに響いた。