そう気にしはじめると、何だかみんなが私を見ているような気になってくる。
すると、近くからクスクスと笑い声が聞こえてきた。
「見て、あの子」
「はい…あの方ですか?」
ひと組の男女がこっちを見ていた。
微かに声が聞こえてくる。
「まだなのねぇ、新入生かしら」
うわ。お嬢様にふさわしい喋り方だな。
そして、何が『まだ』なんでしょうかお姉様。
「1年3組の、城山様ですね」
男の人が考える様子もなく言った。
……え。
なんであの人、私の名前を…!?
「あら……よく知ってるのね」
お姉さんが男の人の頬に手を寄せて、口づけた。
ふたりは長身で美系だ。ゆえに、そーゆー様子も様になる。
見てるこっちは……ちょっと恥ずかしいけど。
「まあ、新入生の名前と顔は全員おぼえさせられますし」
……はい?
これには私も更なる疑問を持たざるをえない。
――新入生の名前と顔は全員おぼえさせられる?
だってあの人生徒だよね?
先生じゃないよね?
そんなん覚えてどうすんのよ。
そんな私の疑問をよそに、彼らの会話は進んでいく。
「…そうなの?」
「ええ」
「……なんだか、イヤね。それは」
お姉さんが男の人の胸に顔をうずめる。
すると男の人は一瞬だけ、すごく意地悪く笑った。
声のトーンをいちだんと低くして、言う。
「妬きますか? ……お嬢様」
……おじょう、さま?