「……あー…泣くなって…」



いつのまにか零れていた涙をぬぐってくれるのにも、それは見当たらない。


でも、泣きやめない。


そんな私をなぐさめようと思っているのか




「…失礼します」




そう呟いて、私を抱きしめた。


熱が戻ってくる。

胸がまた高鳴る。




「申し訳ありません」

頷く。


「大丈夫ですか?」

頷く。


「泣きやんでください」

頷く。


けど、涙は止まらない。


肩を上下させる私。


「お嬢様…」





「私の主人になってくれますか……?」





頭はぐちゃぐちゃだったけど、それだけ、その言葉だけは、確かに響いた。


喉の奥から絞り出すような、そんな。


いつも余裕たっぷりの早坂爽は、今、どんな顔してるんだろう。