「何の用」
「わかるやろ」
「…………愛のことかよ」
櫂は「あたり」と爽を指差す。
「愛ちゃん、爽のことはもう全部知ってるで」
…………ああ。
実家に帰って、聞いたんだな。
言わないでくれって言ったんだけどな。
「アメリカの話は、ほんまに?」
「…………美羽に言われた。主人命令だってよ」
「愛ちゃん悲しんどるで」
…………悲しむ?
「………なんで」
「なんでって。わからんの?」
爽は何も言えない。
自分は愛を傷つけたはずだ。
自分が勝手に呼び寄せて、自分の都合で傷つけた。
自分が遠くに行って喜ばれるならまだしも、悲しまれる理由がわからない。