「…あの」
うるさい外野を気にしている余裕なんてない。
どういうことだ、これは。
「はい。何でしょうかお嬢様」
「契約って何ですか?執事って何ですか?お帰りなさいませお嬢様ってヤツですか!?」
ひざまずく爽サマに質問を浴びせる。
失礼な行動だったけど、嫌な顔ひとつせず笑顔で立ち上がってくれた。
「お帰りなさいませお嬢様…まあ、そんなところですね…」
「ええ」とつぶやき、爽サマがざっと周りを見る。
するとどうしたものか、あれほど騒いでいた女の子たちの声が止んだ。
ささやきでさえ聞こえない。
――……爽サマって何なんだ。
にこ、と変わらない笑顔を私に向ける。
「ここでは煩いですから…そうですね。お嬢様のお部屋でお話致しましょうか。荷物はお運びしますので」
その笑顔に見惚れたのと同時に、
寒気を覚えたのも、事実。