「ねぇ…あんなこと言われてるよ?」
楽しげに美羽が耳に唇をよせる。
爽は表情を変えることもなく「別に」とつぶやいた。
「……俺の主人は愛だけですから」
そっけない態度、他の女のことを口にする彼にキレイな形の眉をよせる。
だが、次の瞬間には勝ち誇ったように笑っていた。
「ね、爽、覚えてる?」
「………何を、ですか」
赤いネクタイを緩め、ボタンをはずしていく。
第3ボタンまではずすと、あらわになる胸元。
「爽がつけた傷だよ?」
日本人とは思えないほどの白い肌に、赤い傷跡があった。
昔、自分が美羽につけたそれに、固まる体。
「一生消えないんだって」
そんな様子を、美羽は微笑みながら見る。
そして
「……だから…爽はあたしに逆らえないよね?」
彼の首に巻かれた赤いネクタイに手をかけた。