普通科と執事科に分かれる通路。

いつものように私は右に曲がろうとしたが、爽に腕を掴まれた。


「な…なに?」

……触んないでって。

別に機嫌が悪いわけではないらしい。

薄い唇を際立たせるほほえみを見せた。



「放課後、教室で待っていて頂けますか?」

「……なんで?」

「朝比奈がお嬢様とお話ししたいようなので……」

!!櫂っ!?

「あ、駄目なら、私から断っておきますが…」

「ううん、わかった!待ってるっ」

櫂に会える嬉しさで、笑顔になって返事をすると、代わりに爽の顔から笑みが消えた。

腕を掴む手に力がこもる。



「痛…っ」

「…えっ、あ…申し訳ございません」

私が顔を歪めると、すぐに離す。

「……大丈夫、ですか?」

心配そうに私を見つめた。



……あ、また、心臓。



――ドキン



「大丈夫、またね」とだけ言って、私は右へ曲がった。


鼓動が、はやい。