城山愛に視線を向けた。
「いい、から」
力なく声を出す。
起き上がる気力もない様子だ。
……コイツの相手してる場合じゃねえか。
ため息をついて、足をどける。
ちょっと脅すと、ぞろぞろと逃げていった。
「…大丈夫か?」
起こして、ブレザーを着せる。
それが大きいのもあるんだろうが、うつむく城山愛がひどく小さくみえた。
なるべく、優しく抱きしめる。
「泣け」と言うと、すぐに肩が震えだした。
「…ふ…ぇ」
こんなに弱いところを見るのは初めてだった。
いやまあ、まだ会って3日しか経ってないんだけど。
「…あり…が…」
何だ。
俺が首をかしげると、城山愛の腕が背中にまわってきて。
「…爽…ありがと…っ」
……………………。
……………爽。
もうなんか、すでに名前とかどうでも良かったんだけど。
いきなりかよ。
………やばい、反則。
『名前で呼ばれた』
そんなことが嬉しくて、
柄にもなく、照れ笑いなんかしてしまった。