城山愛に『爽』と呼ばれたことは喜ばしかったが、今はそれどころじゃない。


「オマエ等、誰に手出してんのかわかってんの?」


1回殴ってみたが、やはり手が痛い。

……殴る価値もないか。


「それ、俺の大事なお嬢様なんだけど」


倒れた田中の腹を踏む。

「ひぃ…」とか、気持ち悪い声出すな。


「覚悟できてんだよな……」


後ろで固まってる西園寺たちを見た。

わざと優しく笑ってみる。


「そちらのお嬢様がたも、わかってる?」

足は続行。


田中のうめき声が煩わしい。

他にも2人の男がいたが、どうやら何もしていないようだし、無視した。

かわりに、こんなヤツが城山愛に触ったかと思うと、頭が痛くなった。

もうこのまま使いモノにならなくしてやろうか、なんて考えが頭をよぎった時、





「もう、いいよ」





城山愛の小さな声が聞こえた。